エー、ヤシから落ちて、心配されていたキースですが、順調に回復しているようでめでたしめでたしというところでしょうか。まぁ、歳も歳ですから、十分な休暇を取ってヨーロッパ公演をしていただきたいものだと思います。
隠「おっ、八かい、きょうはどうした? おっ、娘さんも一緒だね」
八「ああ、娘がちょっと隠居に聞きたいというんでね」
隠「娘さん、なんだい、このあたしに聞きたいことってのは?」
娘「ええ、あのお、ローリングストーンズにギターを弾いている人でキースという人がいますよね。知ってますか?」
隠「知ってますとも、この前、一緒にライブを見に行ったじゃないですか。それで、キースがどうしたの?」
娘「あの人の名前なんですけど、リチャードって書く人と、リチャーズって書く人がいますよね。どっちがほんとなんですか?」
隠「ああ、あれね、リチャーズはリチャードの複数形でね。キースってのは、たくさんいるんですよ。ほら、この前の埼玉スーパーアリーナでも、動きが鈍くなったなと思うと、チャーリーのドラムセットに座って休んだりしてたじゃないですか。そんで、舞台の袖に引っ込んだと思ったら、今度はやたら元気の良い、キースが出てきたりしてましたよね」
八「おいおい、キースが何人もいて、舞台で疲れたら代わりのキースと変わるってのかい、そんな馬鹿なことがあるかい。ささ、帰ろう。こんな馬鹿なことをいう隠居の噺を聞くことないや」
隠「いやいや、ちょっと待ちなさい、今のはもののたとえというやつです」
八「何がもののたとえだよ。ちゃんと教えないと帰るよ」
隠「わかりました。ちゃんと教えましょう。じつはですね、キースの本名はリチャーズなんです。でも、デビューの時にリチャードということにしたんです。でも、しばらくして、リチャーズに戻したんです。だから、今の名前はリチャーズなんですけど、デビュー当時はリチャードだったのです」
娘「さすが、隠居さんだわ。よくご存じで、だてに禿げてるわけじゃないのね」
隠「禿は、関係ありません」
娘「でもね、リチャーズのズだけど、本当は、ツに濁点を売ったヅが正しいのじゃないかしら」
隠「あっ、そういえばそうですね。でもね、リチャーヅって、なんだかかっこわるいじゃないですか。リチャーズのほうが何となくかっこいいんじゃないですかね」
娘「そういわれれば、リチャーヅの『ヅ』って、なんだか人の顔みたいだもんね。かっこわるいわね。禿の隠居さん、教えてくれて、ありがとう」
隠「どういたしまして、でも、好きで禿げてるんじゃないんですから、禿は余分ですけどね」
といって、八と娘は帰っていきました。