えー、少子化でしてな。ほんでもって、人口が減ってるんだそうで。みんな大騒ぎですな。なんでも、
国立社会保障・人口問題研究所っていうのがあります。いいですな、いろんな研究所があるんです。しかも、国立ってのがいいですなあ。だからといって、国立市にあるわけじゃないんです。お国さんという、明治時代の偉人が立てたから国立なんですなあ。あたしの隠居研究所も国立をつけてみたい。どうして、明治のお国さんはあたしのために国立隠居研究所をつくってくれなかったんだろって、恨んじゃいますよ。
ああ、また、八の野郎がこっちに来ますよ。あいつが来ると、ろくなことがないね。
八「おっ、隠居いるかい?」
隠「いるよ、いちゃ、悪いかい」
八「悪かないけど、もう少し、愛想のある返事ができねえのかよ」
隠「悪かったね、愛想がなくて、あたしはね、インテリだからね。インテリはね、愛想があっちゃいけないの。ちょっとでも愛想があったらね、銀行に定期預金にしてしまっとくのがインテリってもんだ」
八「はんっ、また、訳のわからないことをいいやがるぜ」
隠「ところで、なんのようです」
八「あのさ、娘がいうにはね、今の時代、少子化で、人口減少で、年寄りが増えてってね、問題が多いんだってね。でね、娘が言うには、隠居は年寄りだから、何とかしろって。おいらや、娘が払ってる国民年金のお金が隠居の年金になるんだから、少し返してもらえって言うんだよ。なぁ、おいらの娘は賢いだろ。少し、金返せよ」
隠「なぁに、言ってるんですか。馬鹿いっちゃいけないよ。あたしのもらってる年金はね、あたしが奉公に出た頃から少しずつ払ってきたお金なんだらか、八なんかに払う金は一銭だってありません」
八「けちっ」
そういって、八は帰って行きます。
えー、まあ、そういうわけでですな、年寄りを馬鹿にしちゃいけない。ところが、国立社会保障・人口問題研究所でも年寄りを馬鹿にすることが書いてあるんですなあ。こんなことが書いてある。
「高齢化が進むことで年金、医療、介護などの社会保障費が増加して、国民の負担が増大することも懸念されています。ただし、経済や生活は人口だけで決まるものではないので、そうした懸念を実現させないための工夫を国、自治体、企業をはじめ国民全体が協力して築いて行けるかどうかが重要な点です」
年金、医療、介護にお金がかかるってぇのは、年取ると、やっかいなことばかり起こすってぇことじゃねぇのかい。そんなに、年寄りが増えちゃ、いけねぇのかい。なんて、タンカを切りたくなるねぇ。