エー、天気というものは、人間様の都合をあんまり聞いてくれませんな。こっちが「明日は、運動会だから晴れてくれよ」っていっても、「はい、わかりました」なんていって、晴れてくれるわけじゃない。
A「おや、お久しぶり。お元気ですか。今日はいい天気ですね」
B「俺のせいじゃねえや」
なんてね、愛想のない人でね。
まぁ、そうではありますが、人間てものは思いこみが強いですから、都合よく晴れると、やっぱ、おてんとさんは偉いねえと思うわけであります。
というわけで、昨日とうってかわって、今日は、晴れました。洗濯日和でね。昨日は、家の中で干してなんとなく、湿ってて気持ちよくないんですが、今日は気持ちよく乾きますよ。
ってね、洗濯物が、そんな話を聞いていましてね、洗濯物の会話です。
洗濯物A「いやあ、何だね、今日はいい天気だね。今日は、あたしも乾くよ。ぴんぴんになってね。かわいい洗濯物になるんだ」
洗濯物B「あたしゃ嫌だね」
A「なんだい、あんたは、こんなに、いい天気なのに、陰気な顔をして、せっかく晴れたんだからもっと、晴れやかな顔をしたらいいじゃねえか」
B「いくら晴れたってね、まだ、冬だよ。やっぱり、外は寒いじゃねえかよ。こんな寒いところで一日中干されてさ、嫌んなっちゃうよ」
A「そんなこといったってしょうがねえじゃないか。えぇー、お前は、長袖の厚いシャツだし、俺は、厚い股引だ。なぁ、俺たちはよ、冬の服なんだよ。冬の服ってのはな、寒いときに干されるのが役目なんだ。なあ、寒くたってな、外は乾燥してるから、からっと乾くんでぇ。おめえ、これが、冬の服の心意気ってもんよ」
B「(小声で聞こえないように)なにを、張り切ってるんだい、股引のくせに」
A「えー、なんかいったかい?」
B「イヤー、なんにもいってないよ。ああ、また、一日中、寒空で干されてさ、いやになるね。風邪ひいちゃうよ。昨日みたいに、雨降ってさ、一日中家ん中でゆっくり干されてる方があたしゃいいね。家の中にいるのがいいよ」
なんてんで、洗濯物にも引きこもりがいるのであります。